FXの取引には、DD方式(ディーリング方式)とNDD方式(ノンディーリングデスク方式)という2つの取引形態があります。今回取り上げるNDD方式は、海外FXではメジャーな取引方法ですが、そもそもこうしたFX取引の仕組みは、その名称だけ聞いても分かりにくいものです。しかし、取引の根本となる部分のため、確実で安全な取引のためにしっかりと理解しておく必要があります。この記事では、NDD方式の仕組みや、NDD方式のメリット・デメリットなどを解説します。
FXでの取引方法は2種類ある
国内・海外問わず、FXの取引においては、「DD(ディーリング)方式」と「NDD(ノンディーリング)方式」という2種類の方法が存在します。DD方式は国内における大半のFX業者が採用している一方、海外FX業者はNDD方式を採用しています。これらの違いを詳しく説明する前に、説明の鍵となる「インターバンク」について整理しておきましょう。
インターバンクとは?
初心者トレーダーにとって、「インターバンク」とは聞き慣れない言葉ではないでしょうか?インターバンクは「銀行間取引市場」とも呼ばれ、銀行や証券会社などの金融機関のみが参加できる、外国の為替や短期資金の取引を行う市場のことを言います。インターバンク市場は、金融機関が行う日々の営業活動で生じる短期資金の過不足を調整する役割を担っています。「市場」という言葉がついているものの、実際に世界中のどこかに取引場所が存在するわけではなく、各金融機関が電話回線・インターネットなどで連絡を取り合って取引をしています。時差の生じる世界中で取引が行われているため、土日や元旦など以外、インターバンクでは平日・24時間いつでも取引ができます。そのことから「眠らない市場」と称されることもあります。
FXの取引では、このインターバンクとの取引にFX業者のディーラーが介入するかしないかで大きく分かれます。
・DD(ディーリング)方式:FX業者がトレーダーとインターバンクの間に介入する方法
・NDD(ノンディーリング)方式:FX業者がトレーダーとインターバンクの間に介入しない方法
DD方式(ディーリング方式)の仕組み
DD方式とは、トレーダーとインターバンク市場との間に、FX業者が介入してFX業者自らが取引を行うシステムのこと。顧客の注文をFX業者が処理する形になるので、FX業者のディーラーが顧客の注文を受け、それをそのままインターバンク市場に流さずに、トレーダーとは別の発注をして注文約定が行われます。よって、DD方式では、トレーダーとFX業者との間で、相対取引が行われることになります。つまり、顧客が儲かればFX業者が損をし、顧客が負ければFX業者には利益が出ることになります。OTC(Cover The Counter)方式と言われることもあります。
DD方式を仕組み上、さらに2つに分けることもできます。
1.カバー取引
2.マリー取引(社内マリー)
カバー取引は、FX業者と「インターバンク市場で取引をしている提携金融機関」とのあいだでおこなわれる取引のこと。トレーダーの「買い」注文に応じた場合は、FX業者は「売り」のポジションを保有する、といった具合に、トレーダーの取引と反対の売買取引をおこなうことで為替変動のリスクを回避しています。
一方、マリー取引(社内マリー)は、顧客から受けた注文を他の注文と相殺することを指します。例えば、ドル取引において、トレーダーAの買い注文が100万通貨、トレーダーBの売り注文が100万通貨あったとしましょう。マリー取引では、これらを自社のシステム内で相殺することができます。そうすることで、DD方式の業者は、トレーダーの買い注文時のスプレッドと売り注文時のスプレッドで利益が上がります。売りと買いの注文が「なかったことにできる」というのもポイントで、この取引であればFX業者が市場でのリスクを抱えることもありません。これを「呑み行為」ともいいますので覚えておきましょう。
また、DD方式を採用しているFX業者は、スキャルピング(超短期取引)自体を禁止している会社も多いです。なぜならば、スキャルピングのような短期売買はシステム負荷が膨大にかかったり、ディーラーの注文処理が追いつかなかったりなど、FX業者側が損失を被る可能性が高いからです。スキャルピング取引の内容によっては、口座凍結や出金拒否などでトレーダーを制御するFX業者もあります。
DD方式のメリット・デメリット
・スプレッドが狭い
DD方式を採用しているFX業者では、スプレッドが実際のインターバンク市場よりも狭く設定される傾向にあります。例えば、ドル円のスプレッドを0.3銭固定にしているFX業者はたくさんありますが、実際のインターバンク市場のスプレッドでは、その0.3銭よりも広いこともよくあります。取引手数料を完全に取っ払っている業者もあります。つまり、トレーダーにとっては、少しの手数料で取引ができることになります。
・取引の中身が不透明:トレーダーにとって不利な取引が行われる可能性がある
・スキャルピングなどが禁止されていることが多い
・NDD方式を採用していると偽るFX業者がいる可能性もある
一方で、DD方式は取引の中身が不透明であることも多いです。先ほども説明したように、トレーダーとインターバンクの間にFX業者のディーラーが関与するため、FX業者の利益を守るためにあえて純粋な取引をしない可能性も十分あり得ます。
極端な場合、DD方式では相対取引なのでいつも負けているトレーダーの注文はFX業者にとっては利益になります。そういった弱いトレーダーの注文は呑むようにし、FX業者にとっては損失になる「たくさん稼ぐトレーダー」の注文をインターバンク市場に流す、ということもやろうと思えば可能なのです。DD方式・NDD方式ともにスプレッド差がFX業者の収益になるのですが、DD方式ではスプレッドが狭い(つまりスプレッド差による収益が少ない)状態で運営しているとなると、より「内部で何らかの処理操作が行われているのでは?」との声が上がりやすくなっています。トレーダーの注文が、実際にインターバンクに通っているのかは、トレーダー自身でもよくわからないのです。
・ストップ狩り
・不利なスリッページ
・故意のレート変更
・故意のリクオート
・故意のシステムダウン
また、不透明であるからこそ、上記のようなトレーダーが不利になる取引が行われる可能性があることもデメリットと言えるでしょう。NDD方式のほうがトレーダーの印象が良いため、実際はDD方式であるにも関わらずNDD方式を採用していると偽るFX業者がいる可能性もなきにしもあらずなのです。
NDD方式(ノンディーリング方式)の仕組み
NDD方式とは、FX業者が自ら内部で処理・取引したりせずに、インターバンク市場へ直接トレーダーの注文を流す仕組みのことを言います。FX業者はスプレッドを高めに設定しており、主にそのスプレッドによって利益をあげることになります。FX業者側で顧客の取引には一切関与しないために取引の透明性・公平性が高く、顧客にとっては不利益がほとんどなく約定力が高いのが特徴です。また、スキャルピングOKの傾向にありますから、短期的に多くの取引をしたいタイプのトレーダーは自ずとNDD方式を選択することになります。
NDD方式では、スプレッドはFX業者の利益になるため、相対取引を行うDD方式のFX業者とは反対に、取引回数が増えれば増えるほどFX業者は儲ります。NDD方式でスキャルピングOKなのは、このためです。
・NDD方式:トレーダーにたくさん取引をしてほしい
・DD方式:トレーダーが負ける取引をしてほしい
また、NDD方式をさらに細かくわけるとSTP方式とECN方式の2つの注文方式に分けることができます。
・STP方式
STPとは「ストレートスループロセッシング」の略で、スプレッドにFX業者の利益を上乗せした形で顧客にレート提供する方式のこと。口座によって区別され、例えばXMでは、「スタンダード口座」や「マイクロ口座」が該当します。
・ECN方式
ECNとは「エレクトニックコミュニケーションズネットワーク」の略で、トレーダーの注文を電子取引市場にダイレクト発注する方式のこと。トレーダーの注文は直接インターバンクに流されてマッチングされ、その証拠としての「板情報」も開示されます。ディーラーが介入する余地がほとんどないため、NDD方式の中でも特に公平性が高いのが特徴。最近は海外FX業者の大半がこの注文方式専用のECN口座の提供を行っています。約定金額に対して手数料を海外FX会社に支払うため、スプレッドはSTP口座よりもかなり少ない傾向にあります。
NDD方式のメリット・デメリット
・取引の透明性・公平性が高い
・スキャルピングなどに対する規制が緩い
・DD方式に比べてスプレッドが広い
NDD方式はトレーダーの注文をそのままインターバンク市場に通すため、FX業者のディーラーの介入の余地がなく、DD方式に比べて取引の透明性が高いのが最大のメリットです。ただし、その分内部で有利な処理ができないため、手数料(スプレッド)で収益を確保するしかありません。そのため、DD方式の比べるとスプレッドはあらかじめ広めに設定されています。
NDD方式はスキャルピングOK
スキャルピングとは、超短期で取引をするFXのトレードスタイル。トレード期間は数秒~数分で、少しの値動きで判断して勝負をつけます。超短期売買なので、小さい利益をコツコツと積み重ねて取引して利益を大きくしていくスタイルです。ロスカットの心配もほぼなく、ローリスクなので、FX取引の経験を積むにも適しています。
ちなみに、FXのトレード方法には取引の期間別に分類して次の4つの種類があることも覚えておきましょう。
・スキャルピング:超短期売買
・デイトレード:短期売買
・スイングトレード:中期売買
・長期トレード:長期売買
DD方式のFX業者は自社の利益を上げるために「トレーダーに負けてほしい」のですが、NDD方式では手数料がメインの収益となるため、勝ち負けは関係なくなるべく取引を活性化させたいと考えています。そのためスキャルピングはOKどころかむしろ大歓迎といったところ。FX業者内のディーラーを通すか通さないかで、こんなにも取引の性質が変わるのです。
NDD方式を採用している海外FX業者一覧
基本的に、海外FX業者ではNDD方式を採用しています。下記に挙げたメジャーなFX業者はいずれもNDD方式です。
・XM
・AXIORY
・TitanFX
・Traderstrust
・LAND-FX
・Tradeview
・iFOREX
・HotForex
・FBS など
NDD方式を採用している国内FX業者は?
国内のFX業者はほとんどがDD方式を採用していますが、中にはNDD方式で取引を行っている業者もあります。現時点では主に次の3社がNDD方式採用業者です。
・ヒロセ通商(LION FX)
・GMOクリック証券
・セントラル短資F
まとめ
このようにNDD方式はDD方式に比べて取引の透明性が高く、トレーダーにとっても好まれやすい取引方法です。FX業者のディーラーが介入するかしないかの違いだけで、仕組みや根本の性質が大きく変わることをしっかりと理解しておきましょう。
・海外FX業者の多くはNDD方式を採用、一方国内FX業者での採用は少ない
・DD方式に比べて透明性・公平性が高い
・その代わりに、スプレッドが広めに設定されている(手数料が高め)
・NDD方式たくさん取引をしてほしいから、スキャルピングもOK
NDD方式のほうがトレーダーにとって親切であるとはいえ、それは、「信頼できるFX業者での取引の場合」に限られます。特に、日本国内よりも圧倒的に規制の緩い海外FXでの取引には小さなトラブルがつきものです。証拠金を意図せず無くしてしまったり損したりしないためには、何より信頼できるFX業者のもとで取引を行うことが最優先です。今回のNDD方式・DD方式に限らず、このほかのFXの仕組みやルールもよく理解したうえで、最適なFX業者を選びましょう。
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